貿易取引では,外国に所在する取引相手方の信用状態の調査・把握が困難であること,商品の運送に時間がかかること,さらには相手方の債務不履行が生じた場合,裁判上の救済を求めることは時間とコストの観点から見合わない等の問題がある。
そこで,その決済においては,@代金支払と商品引渡しに係る両当事者のリスクの軽減(同時履行の確保等)およびA輸入者(買主)の信用リスクの問題をめぐって,売主たる輸出者と買主たる輸入者の利害が鋭く対立する。
極端にいえば,輸出者はできるだけ代金を早く回収したいと考え,他方,輸入者は商品を早く受け取りたいが代金支払はできるだけ遅くしたいと考えるともいえる。
さらに,B輸出者が契約で定めたとおりの品質と数量を有する商品を船積みしたのかも問題となる。
たとえば,外観からは判別できないが粗悪な品質の商品や種類は同じだが見本品と異なる商品を船積みするかもしれない。
各種の貿易決済手段は,先の@とAの点について,輸出者および輸入者それぞれに異なったメリット・デメリットを有している。
Bについては,信用状条件として検査証明書を要求する等の方法。
実務では,相手方当事者との取引関係や取引状況を踏まえた交渉により決済手段が選択され,売買契約の中で指定されることになる。
外国為替で用いられる基本概念は,内国為替と共通のものもあるが,外国為替の本質は外貨債権の売買であることから,さらに,外貨債権の売り(売為替)と買い(買為替)という区別が生ずる。
(a)売為替・買為替銀行の立場から見て,顧客に外貨債権を売ることを「売為替」といい,逆に,顧客から外貨債権を買うことを「買為替」という。
言い換えれば,銀行が外貨債権を「売る」ことを売為替,銀行が外貨債権を「買う」ことが買為替である。
日本から米国に100万ドル送金する場合,銀行が送金依頼人に100万ドルを「売り」(送金依頼人は100万ドルに相当する円貨額を支払う),それを米国に送金すると考えればよい(売為替)。
逆に,米国から100万ドル送金されてきた場合は,銀行が100万ドルを「買い」取り,それに相当する円貨額を受取人が受領することになる(買為替)。
(b)仕向銀行・被仕向銀行と仕向為替・被仕向為替外国為替の起点となる銀行を仕向銀行といい,終点となる銀行を被仕向銀行という。
送金の例でいえば,送金依頼人の依頼により送金を実行する銀行が仕向銀行であり,受取人の口座がある銀行が被仕向銀行である。
そして,仕向銀行・被仕向銀行がそれぞれ取り扱う外国為替を仕向為替・被仕向為替という。
(c)順為替と逆為替外国為替取引において,為替の流れと資金移動の方向の両者に着目した分類である。
為替の流れと資金移動の方向が同一方向の場合を,順為替,並為替または送金為替といい,為替の流れと資金移動の方向とが逆になる場合を,逆為替または取立為替という。
具体的には,債務者が外国の債権者に資金を支払う場合が順為替となり,外国送金が代表的例である。
外国為替手段の流れと資金の流れが同一方向になることから,「順」為替と呼ばれる。
これに対し,債権者が外国の債務者から代金を取り立てる場合が,逆為替,取立為替となり,為替手形を利用した取立てが一般的である。
(d)直物為替・先物為替外国為替は外貨債権の売買を本質とするが,顧客からの依頼に対して銀行が即日,通貨の交換を実行する為替を直物為替(スポット為替)という。
たとえば,外国への送金依頼の実行や,輸出為替の買取りなどは,直物為替で行われる。
これに対し,将来において外貨による入金・支払などがある場合(将来行われる輸出入の決済など),受取円価額および支払円貨額は為替相場の変動によるリスクにさらされる。
この為替リスクを回避するために,現時点で将来の一定時期に行う通貨交換に適用される為替相場を銀行に予約することがある(為替予約)。
このように将来において実行される為替を先物為替という。
(e)外国為替相場外国為替相場とは,簡単にいえば通貨の交換比率である。
外国通貨1単位に対して自国通貨がいくらになるかを表示する形式を自国通貨建てといい(例:1ドル=130円),自国通貨1単位に対して外国通貨がいくらになるかを表示する形式を外国通貨建てという(1円=0.0077ドル)。
外国通貨建て表示は,英国,ユーロ,オートラリア,ニュージーランド等で採用されている。
なお,通貨単位が便宜上100単位とされることがある。自国通貨との交換比率ではなく,ある1国の通貨(基準通貨)から見た2通貨間の交換比率をクロス・レートという。
国際経済の基軸通貨であるドルを基準通貨として対ドルで表示されるのが通常である(例:1ドル=1.1ユーロ)。
これを基準相場という。2つのクロス・レートを用いて基準相場にない為替相場を算出することができ,これを裁定相場という(例:1ドル=130円と1ドル=1.1ユーロから,裁定相場1ユーロ=118円となる)。
外国為替相場には,銀行間相場(InterbankRate)(市場相場(MarketRate)ともいう)と対顧客相場(CustomerRate)とがある。
前者は銀行間で形成される相場であり,市場の取引時間のあいだ需給に応じて刻々変化する。
これに対して,銀行と一般企業・個人等との外国為替取引に適用される相場が対顧客相場であり,1日1回午前10時過ぎに,銀行間直物相場をもとに決めた仲値〔公示仲値〕をもとにして,対顧客相場が公示される〔公示相場制度〕・対顧客相場には,直物為替に適用される直物相場および先物為替に適用される先物相場のほか,電信為替相場,一覧払手形為替相場,期限付手形買相場,現金相場などの種類がある。
電信相場とは,銀行のマージン(利鞘)のみを含み資金の立替期間の金利などを含まない相場である。
外国送金や外貨預金などに適用される。
売為替に適用されるのが電信売相場(TTS:TelegraphicTransferSellingRate)であり,買為替に適用されるのが電信買相場(TTB:TelegraphicTransferBuyingRate)である。
一覧払手形相場には,一覧払輸出手形買相場と一覧払輸入手形決済相場とがある。
一覧払輸出手形買相場(A/S:AtSightBuyingRate)とは,信用状付荷為替手形を輸出者から銀行が買い取るときに適用される相場である。
買取銀行が,荷為替手形を信用状発行銀行に送付し支払を受けるまでの期間(郵送日数分)だけ資金の立替を要するので,その郵送日数分(メール期間)の立替金利(MailDays'Interest)を電信買相場から差し引いたものである。
一覧払輸入手形決済相場(AcceptanceRate)とは,輸入者が輸出者から振り出された信用状付荷為替手形を信用状発行銀行との間で決済するときに適用される相場である。
たとえば,信用状付荷為替手形を買い取った銀行は,信用状発行銀行の決済勘定から手形金額を引き落として補償を得る。
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